あの日から、私は郁也と夏樹くんがずっと隣にいる。
 正直、あつっくるしい。

「あのぉ、弁当買ってきていいかな?」
「えっ?弁当?何がいい?蘭ちゃん」
「いや、自分で買う。」
 
 ずっとだ、夏樹くんはずっと優しい。
 郁也はそういう優しさはできないタイプだから、たまに優しい態度をとる。
 
「蘭、焼きそばパン。はい。」
「あっ、ありがと!」
「郁也さん、僕にはないんですか?」
「あ゛?あるわけないだろ。」
「ひどいです、郁也さん。」
 
 なんだ、なんだ、かわいすぎるっ
 夏樹くんかわいすぎるっ。
 
「ぐっ...あ・・・いてっ・・。」
「どうしたの!?夏樹くん!」
「い、いや、急にお腹痛くなっちゃって。」
「大丈夫!?」
「構うな、ソイツに。」
「え?」
「どうせすぐ治るだろ、蘭、構うな。」
「...サイッテー!優しさってのがないのっ!?夏樹くんかわいそうじゃん!」
「ソイツの思うツボじゃねーか。お前ってホント男の事わかってねーな。」

 冷たい。郁也は優しさなんてないの?
 
「ほ、保健室。保健室に連れてって。」
「うっうん!私の肩借りて!」
「ダメだ、俺がソイツを持つ。蘭に触らせたら危ない。」
「え...う、うん。」
 
 ヨイショッ
 
「よし、行くぞ。」
「うん、郁也さんありがとう。」
 
【 キャァァァァ、イケメンがイケメンをお姫様抱っこしてるわよぉー!
  なにその絡みぃ♡いいわぁ 】
 
(女子たち興奮やばいなぁ。たしかに萌えるかも。)
 
「おい、蘭いくぞ。」
「うん」
 
 カツカツカツ....
 
「よいしょっと。」
「ありがとう、郁也さん。おかげで楽になれたよ。」
「どうってことねーよ。」
 
(なんやかんや仲良さそうじゃん。)
 
「蘭、いくぞ。」
「でも、夏樹くんが・・」
「大丈夫さ、先生もついてるし。」
「わかった。じゃあ先行くね夏樹くん。」
「うん、ありがとう。」
 
 私が保健室から出た瞬間...
 
 うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
 
「何!?」
「夏樹じゃねーか?いくぞ!」
「うん!」
 
 そこには、夏樹くんが倒れていた。
 
「キャッ!」
「大丈夫、死んではねーよ。」

「会っちまったか。」
「え?何に?」
「知らねーの?ここの保健室の噂。」
「怖い話...?」
「おう。ここの保健室には、10年前死んだ女がいたらしくてな。しかも死因が、同級生による殺害だったそうだ。だからたまに、ベットにいる人を襲うんだって。」
「怖...夏樹くんは大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。ビビって気絶しただけだ。」
「そう。じゃあ安静にしとかないとね。」
「おう。」
 
 保健室の「幽霊」。
 その幽霊は私と関わり深い人とは、その時私は知らなかった。
 
 
 続く..