「この前秋葉原で魔女を見たわ」

二人の会話は必ず双子の姉・静流から始まる。

「ああ、コスプレか」

「違うわ、あれは本物よ」

弟の慶二は姉が空想癖があることを熟知している。
「また空想か」

「違うわ、美月が『本物』言ってたの」

美月とは姉の友人だ。適当な事を言って姉をからかって遊ぶのが何よりの楽しみらしい。
慶二も美月の事はよく知っているし、美月の性格も嫌いではない。

「へぇ、現代にも魔女はいるのか」

慶二も取り敢えず乗っかってみることにした。

「そうよ、いるのよ」

「やっぱり箒に乗るのかな」

「違うわ、現代の魔女は掃除機に乗るのよ」

「はい?」

「掃除機に乗って空を飛ぶのよ」

慶二は掃除機に乗って空を飛ぶ魔女の姿を想像した。
なんとも安定感のない。慶二はそう思った。

「現代的だね」

「そうなのよ。掃除機の性能も飛行に影響するのよ、きっと」