「大丈夫?美希ちゃん…」


「どうして…?私の名前を…?」


「私は、君の………遠い遠い親戚だからだよ」


何と言ったらいいか、思いつかなかった。

私はそのまま彼女を自分の車に乗せ、家まで送った。

幸い、美希ちゃんは服を脱がされた程度で、大事には至らなかった。ただ、彼女の体は怯えるようにずっと震えていた。


別れる際に、美希ちゃんがこう言ってきた。

「本当にありがとうございました。あ、あの…お礼をしたいんで…お名前と、連絡先を…」


「いや、いいんだ…。ただの通りすがりだから」


私はそう言って車を出し、美希ちゃんの家の前から足早に立ち去った。


翌日、私は自宅に探偵社の者を呼んだ。


「連絡が遅くなってすまなかったね。見つかったんだって?」

探偵は、冴えない顔をしたまま、こう答えた。


「見つけたのですが……その…昨日亡くなられました」

「え?」
私はその言葉がすぐには受け止められなかった。


「事件に巻き込まれたみたいです。昨日の今日なので、ニュースでもやっているかと…」

私はすぐにテレビをつけて、ニュースのチャンネルに回した。


「このニュースです」
と、探偵が画面をタッチする。


「昨日深夜3時頃、相模原市の建設現場付近で、車の中から一人の男性の遺体と、車の外からは意識不明の重体の男性が発見されました。ネオ・トーキョーポリスは、何者かに襲われたような痕跡があったため、殺人事件として調べを進めています。遺体で発見されたのは、大木政宗さん27歳…」


「大木政宗…この方で間違いないですよね?誠に残念です…」


「大木…博士…」

私は頭が真っ白になり、何も考えられなかった。

テレビに映っていた車、現場は、紛れもなく昨日の事件の現場だった。