まあ、簡単に自分の自己紹介的なことをしておこう。私の名前は、笹倉康一。やすいちではないぞ。こういちだ。現在現役ピッチピチの高校2年生だ。え?なんでこんなに上から目線なのかと聞かれたら、私は今この話し方にはまっているからである。

 いきなりだが、これから私の過去について知ってもらいたいので、読者の諸君にはタイムマシン的な感じのもので五年前にとんでもらうよ。もちろん安全に帰ってこれる保障なんかないけどね。

 では、いってらっしゃい。

 

 ふと、顔を上げるとそこに在るのはいつもと同じ風景。天井がそこにはあった。康一は市内の私立中学に通う12才である。自分の部屋から出た彼は、朝食を適当に済ませて、学校にいくと言って家を出ていった。いつもと同じ通学路、いつもと同じ学校生活に飽き飽きとしつつあった彼は、部活に入ってまだ一ヶ月も経たないのに退部したげな雰囲気をまとっており、学校の教師陣からは不安な目を向けられていた。成績はごく普通で、あと少しで届きそうな優秀者に仲間入りできずにいた。彼は、自分のやりたいことを探していた。

 彼は、いつもと同じ様に有名作家の短編集を読み休み時間を過ごしていた。
「康一、お前も一緒に放課後遊ばない…?」
 いつも康一にまとわりついてくる幼なじみの智也がそこにいたのである。康一は智也に少し距離を置いていた。
「いや、今日は部活があるから遠慮しとくよ。」
 すると、用事なになにー?という目で智也がじっと見てきたので康一は気まずさを覚え、目を反らしたのだった。

 放課後になると康一は智也からの誘いを断った理由の部活を休み、最寄りの書店に足を運んだ。
「ふーん、フランス語かぁ、話せたら楽しいし、かっこいいなぁ。」
と、思い参考書や書籍を手に取り読んでみた。
「誰でも話せるようになるフランス語かぁ…。」
まだ英語も完璧ではないのを棚にあげて、康一は学んでみたいと思った。

 帰宅すると、普段はソファーでゴロゴロして時間を潰していたが、今日はフランス語があるので、机に向かい五時間ほど集中して勉強した。普段はこんなに集中しないが、いつもの日常と違う何かに引かれた彼は止まらない。朝も五時に起きて朝からも勉強した。彼はいつもの日常が違っていくことに希望と楽しみを覚えたのだろう。その次の日も、そのまた次の日も同じように生活した。

 彼はふと考えた。この三日間同じように生活してきたことも自分の中では既にいつもの生活として肯定されていたのである。

 これではいけない、またいつもの繰り返しになると思い、また新しいことを彼の身体中が求めた。