「私もう家に帰らないと…。」

本当はもっとしゃべりたかったけど時間は夜の10時。京都から家まで2時間かかる。はやく帰らなければならなかった。

「君、本気で俺のカメラ預かる気かよ?」
「当たり前でしょ。だってあんたカメラ返したら本当に死ぬもの!なんとなく…わかるの……」

彼は深いため息をついた。こんな小娘に振り回されて死ねない俺ってツイてないってな感じで。うるさいのよ、あんたが勝手に私しか撮れなくなったんじゃない。
だいたい、惚れた男が自殺志願者だなんて……ツイてないのはこっちだ。


彼は私の右の手首をぐいっとひっぱりどこからか出したペンで私の手のひらになにか書き始めた。
私は彼が左利きであることを知った。
彼は書き終わるとなにも言わずに闇に消えて行った。
手のひらには書いてあったのは……