叶汰side

「本当に行かないの?」

「行かないよ」

優輔がしつこく聞いてくる。

「あの子だろ....ずっと探して忘れられ
ない子って....」

「........お前千尋が好きなんだろ?」

「............」

「分かりやす。」

「好きになっちまったもんはしゃーねー
だろ?」

「ならいいじゃん。」

「よくないだろ?!」

「うるせーんだよ。お前。黙ってろよ。
いいんだよ。俺は千尋を諦める。」

「なんでだよ。なんでそうなるんだよ」

「俺にも気になるやつがいる。それだけ。」

「叶汰....」

俺はそのまま帰っていった。
俺だって千尋が好き
千尋がかわいー
一緒にいたい。
だけど、ダメなんだよ。
俺には....あの子がいる...。
今すぐ千尋を抱きしめたい。
でも...

総合病院。

トントン。

「真奈美具合いはどう?」

「....今日は普通よ。どうしたの?」

「なんでもないよ。お見舞い。」

「そう....。ごめんね、叶汰....」

「え?」

「叶汰の自由奪っちゃって........」

「いいんだよ。真奈美。そんなこと
考えるなよ。真奈美」

10年前俺を助けてくれた真奈美。
俺が事故にあいそうになってとっさに
まなみは俺を守ってくれた。
意識はあったが俺はずっと真奈美を
支えていこうと思った。

「あの時真奈美が助けてくれたから
今は俺がここにいる。だから、俺は
真奈美を守る。」

千尋が好き。
だけど、真奈美が大事。
どちらかなんて選べない。
でも千尋には幸せになってもらいたい。
再会して嬉しかった。

だけど、この気持ちは....
この距離は....締まっておこう。