いつものにこやかな笑みを浮かべる椎名さん。

……うそ。いつもとはちょっと違う。
その瞳には確かに薄すらと熱がこもっていて。

その瞳から、何故か目が逸らせない。

近づいてくる顔。
私はまるで呪文にかかったように、目を閉じてしまった。

う、わ…。

柔らかい何かが唇に触れた。
考えるまでもなく、椎名さんの唇だ。

優しく、ゆっくり。
まるで私を怖がらせないかのように。

僅かに角度を変えながら、触れるだけの口づけ。

私、今、椎名さんとキスしてる。

ユミとシンとしてじゃなくて、朝倉汐里と椎名春葵のキス。


これが私の、ファーストキスだった。