話は、約一週間ほどさかのぼる。 その日は、たまたまお母さんに用事があって事務所へ行った。 都内にある10階建てのビル。 レッスンスタジオから社員の事務所まであって、社長室は最上階。 ドアを開けようとしたら、中から声がした。 『ホントに困ったよ美里さん』 美里って言うのは、お母さんの名前。 あれ、誰か来てるのかな。 どうしよう、出直した方がいいかなと思いながらも、とりあえずノックをする。