「あの、すいません。山口みかさんの病室はどこですか?」
「どちら様で?」
「...ぇっと..........。」
咄嗟に病院に来たものの、やはり事件に巻き込まれたみかの病室に簡単には行けなさそうだ。
「......空実ちゃん?空実ちゃんっ!!!」
隣の窓口で何やら手続きをしていた女の人が私に喋りかけてきた。
おでこにシワができて、くまのひどくやつれた目をしているこの女の人...。
「...みかのおかあさん?」
「そうよ!来てくれたのね?」
「あ...はい。」
すごくしんどそう。目の周りには泣いた後がある。
きっと寝ていないんだろう。
「空実ちゃん...、今のみか、情緒不安定で誰とも話したくないって言ってるんだけどもしかしたら、もしかしたら、親友の空実ちゃんが会いにきてくれたって知ったら喜ぶかもしれないわっ!」
「ぁ...いや、」
「さぁ!行きましょ!!」
お母さんに手を取られ思うがままに連れて行かれる。
...お母さんは、きっとみかとまだ連絡を取り合って親友だと思い込んでいるのだろうか。
苦しい。
胸がとても苦しい。
心が痛い...。
まだ、みかに会う心の準備をしていない...。
どうしよう、顔を見てなんて言おう?
『大丈夫?』
いやいや、そんなの大丈夫じゃないに決まってる。
情緒不安定だって言ってたし。
癇に障るようなことできないよね...。
それ以前に、みかは私のこと昔と同じように接してくれるかな?
それが一番怖い...。
何も考えずに家を飛び出してここに来たけど、私みたいに昔の親友を忘れていないだろうか?
私のこと嫌いになっていないだろうか?
私のこと忘れてはいないだろうか?
考えれば考えるほど頭の中がいっぱいになる。
どうしようどうしよう。
不安が募る。
息苦しい。
コンコンっ
ドアを叩く音でハッと我に返る。
「みか〜?お母さんよ。」
「...ママ?」
「ええ。」
ドアの向こうで聞こえた優しいみかの声。
懐かしい。
「ママだけだね?」
「...そうよ。」
え?
「ちょっ!お母さん。そんなこと言っていいんですか。私もいますよ?」
焦ってお母さんの方を見る。
もちろん、小声で。
「ええ。みかは私以外会うのを拒んでるけど、空実ちゃんなら大丈夫よ。親友だもの。」
背筋がぞっとした。
......親友じゃない。
もう2年も連絡を取り合っていない。
それが親友といれる?
友達と言える?
ただの知り合いだ。
いや...それ以下だ。
「開けるわよ〜」
お母さんがゆっくりと病室の戸を開ける。
「ちょっ!」
戸を開ける手を止めようとしたが遅かった。
ドンッ
少し強く開けられた戸は音を立てて止まる。
全てがスローモーションに見えた。
ゆっくりと私を病室へ招き入れる、みかのお母さんの手。
それと同時に、病室のベットで本を読んでいたみかが見えた。
みか...。
少し髪が伸びたのか大人っぽい。
「みか、空実ちゃんが来てくれたわよ。」
私は、勇気を出して病室に一歩足を進める。
「...みか?ねぇ?みかっ!!??どうしたの!!!」
ゴトッ
鈍い音が病室に響いた。
音がした方の床を見ると、さっきまでみかが読んでいた本が落ちていた。
恐る恐る視線をあげる。
「...ぃや」
みかが異常なほど震えていた。
「落ち着いてっ!!みか!!」
必死にお母さんがみかの背中をさすっている。
...私?
私のせい?
「みかっ!大丈夫!?お医者さん呼ぶからね待ってね、大丈夫よ。おかあさんはここにいるよ。」
「やっ!いやっ!!」
みかがお母さんの腕を振りほどいている。
どうしたらいいの?
わ、私何をしたらいいの。
何もわからなくてただ突っ立っているまま。
「空実ちゃん。ごめんね、お医者さん呼んでくれないかな?
はいはい、大丈夫よ、みか?
お願い!空実ちゃん!」
震えるみかを必死でなだめながら、私は頼まれた。
ガクガクと震える足
はやくっ!早く呼びに行かないと。
「.......!?」
決心して顔を上げた時だった。
みかと目があった。
充血したその目にたくさんの涙が溜まっていて、見ていられなかった。
時が止まる...
次の瞬間
「いやあああああああああああああああああああ来ないでっ!!城田斗真!!くんなっ!!!!シネっ!!!」
スローモーションのように耳に痛々しい音が入った。
咄嗟に耳を塞いでその場に座れこむ。
「殺してやる。殺してやる。うぎゃああああああいあやあああああ!!!」
「みかっみかっ!!」
怖い怖い怖い。
こんな声みかじゃない。
「あの野郎、シネばいいんだシネばシネばシネばシネシネシネシネシネっ!!!!」
カチャン
ベットの方から音がした。
と同時に
「危ないっ!!!!!空実ちゃん!!」
悲鳴にちかい叫び声が聞こえて、顔を上げる
「っ!?」
みかの顔が目に前にある...
「お前なんか死ねばいい城田斗真。」
.......斗真?
「空実ちゃん!逃げてっ!危ない!」
みかのお母さんの方を見る。
涙をボロボロながしながら体が震えている。
なに!?
「しねええええええええ!!!」
咄嗟にみかのほうに顔を戻す。
ギラリと輝く眩しい何か...。
刃物だ。
時が止まったかのようにたくさんのことが頭で推理される。
おそらく果物用ナイフだろうか
と言っても使い方を間違えば凶器になる。
それが、私の首めがけて振り落とされようとしているのだ。
こわい、声が出ない。
体動かない。
ギラリと輝く刃物の先から目が離せない。
耳に入ってくるのは悲鳴と狂気に狂った叫び声だけで、
私は目を閉じることしかできなかった。
「どちら様で?」
「...ぇっと..........。」
咄嗟に病院に来たものの、やはり事件に巻き込まれたみかの病室に簡単には行けなさそうだ。
「......空実ちゃん?空実ちゃんっ!!!」
隣の窓口で何やら手続きをしていた女の人が私に喋りかけてきた。
おでこにシワができて、くまのひどくやつれた目をしているこの女の人...。
「...みかのおかあさん?」
「そうよ!来てくれたのね?」
「あ...はい。」
すごくしんどそう。目の周りには泣いた後がある。
きっと寝ていないんだろう。
「空実ちゃん...、今のみか、情緒不安定で誰とも話したくないって言ってるんだけどもしかしたら、もしかしたら、親友の空実ちゃんが会いにきてくれたって知ったら喜ぶかもしれないわっ!」
「ぁ...いや、」
「さぁ!行きましょ!!」
お母さんに手を取られ思うがままに連れて行かれる。
...お母さんは、きっとみかとまだ連絡を取り合って親友だと思い込んでいるのだろうか。
苦しい。
胸がとても苦しい。
心が痛い...。
まだ、みかに会う心の準備をしていない...。
どうしよう、顔を見てなんて言おう?
『大丈夫?』
いやいや、そんなの大丈夫じゃないに決まってる。
情緒不安定だって言ってたし。
癇に障るようなことできないよね...。
それ以前に、みかは私のこと昔と同じように接してくれるかな?
それが一番怖い...。
何も考えずに家を飛び出してここに来たけど、私みたいに昔の親友を忘れていないだろうか?
私のこと嫌いになっていないだろうか?
私のこと忘れてはいないだろうか?
考えれば考えるほど頭の中がいっぱいになる。
どうしようどうしよう。
不安が募る。
息苦しい。
コンコンっ
ドアを叩く音でハッと我に返る。
「みか〜?お母さんよ。」
「...ママ?」
「ええ。」
ドアの向こうで聞こえた優しいみかの声。
懐かしい。
「ママだけだね?」
「...そうよ。」
え?
「ちょっ!お母さん。そんなこと言っていいんですか。私もいますよ?」
焦ってお母さんの方を見る。
もちろん、小声で。
「ええ。みかは私以外会うのを拒んでるけど、空実ちゃんなら大丈夫よ。親友だもの。」
背筋がぞっとした。
......親友じゃない。
もう2年も連絡を取り合っていない。
それが親友といれる?
友達と言える?
ただの知り合いだ。
いや...それ以下だ。
「開けるわよ〜」
お母さんがゆっくりと病室の戸を開ける。
「ちょっ!」
戸を開ける手を止めようとしたが遅かった。
ドンッ
少し強く開けられた戸は音を立てて止まる。
全てがスローモーションに見えた。
ゆっくりと私を病室へ招き入れる、みかのお母さんの手。
それと同時に、病室のベットで本を読んでいたみかが見えた。
みか...。
少し髪が伸びたのか大人っぽい。
「みか、空実ちゃんが来てくれたわよ。」
私は、勇気を出して病室に一歩足を進める。
「...みか?ねぇ?みかっ!!??どうしたの!!!」
ゴトッ
鈍い音が病室に響いた。
音がした方の床を見ると、さっきまでみかが読んでいた本が落ちていた。
恐る恐る視線をあげる。
「...ぃや」
みかが異常なほど震えていた。
「落ち着いてっ!!みか!!」
必死にお母さんがみかの背中をさすっている。
...私?
私のせい?
「みかっ!大丈夫!?お医者さん呼ぶからね待ってね、大丈夫よ。おかあさんはここにいるよ。」
「やっ!いやっ!!」
みかがお母さんの腕を振りほどいている。
どうしたらいいの?
わ、私何をしたらいいの。
何もわからなくてただ突っ立っているまま。
「空実ちゃん。ごめんね、お医者さん呼んでくれないかな?
はいはい、大丈夫よ、みか?
お願い!空実ちゃん!」
震えるみかを必死でなだめながら、私は頼まれた。
ガクガクと震える足
はやくっ!早く呼びに行かないと。
「.......!?」
決心して顔を上げた時だった。
みかと目があった。
充血したその目にたくさんの涙が溜まっていて、見ていられなかった。
時が止まる...
次の瞬間
「いやあああああああああああああああああああ来ないでっ!!城田斗真!!くんなっ!!!!シネっ!!!」
スローモーションのように耳に痛々しい音が入った。
咄嗟に耳を塞いでその場に座れこむ。
「殺してやる。殺してやる。うぎゃああああああいあやあああああ!!!」
「みかっみかっ!!」
怖い怖い怖い。
こんな声みかじゃない。
「あの野郎、シネばいいんだシネばシネばシネばシネシネシネシネシネっ!!!!」
カチャン
ベットの方から音がした。
と同時に
「危ないっ!!!!!空実ちゃん!!」
悲鳴にちかい叫び声が聞こえて、顔を上げる
「っ!?」
みかの顔が目に前にある...
「お前なんか死ねばいい城田斗真。」
.......斗真?
「空実ちゃん!逃げてっ!危ない!」
みかのお母さんの方を見る。
涙をボロボロながしながら体が震えている。
なに!?
「しねええええええええ!!!」
咄嗟にみかのほうに顔を戻す。
ギラリと輝く眩しい何か...。
刃物だ。
時が止まったかのようにたくさんのことが頭で推理される。
おそらく果物用ナイフだろうか
と言っても使い方を間違えば凶器になる。
それが、私の首めがけて振り落とされようとしているのだ。
こわい、声が出ない。
体動かない。
ギラリと輝く刃物の先から目が離せない。
耳に入ってくるのは悲鳴と狂気に狂った叫び声だけで、
私は目を閉じることしかできなかった。

