あの日の記憶が蘇ってくる。
あれは、5歳のころだったかな。
大好きな姉が、施設に引き取られた。
こうでもしないと、お金が足りないのだ。
生きていけない危機に、姉は
「ひなが行く。ひなを売って。」
と自ら申し出たのだ。
「おねーちゃん!まってよぉ!」
泣きじゃくるあたしを見かねたお母さんは、お母さんの魔法であたしの記憶を変えたんだ。
お母さんも、魔法を使える一族だから。
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「垢琉…じゃあ、垢琉は…」
「そう。ぼくは、るーさんが3歳の時に
交通事故で亡くなった るーさんの、姉さんの、弟だよ。」
垢琉があたしの肩に手を置く。
それを、黙って見つめるしかなかった。
「垢琉…は、死んだ…の?」
「あぁ、ぼくは死んだ。でも、魔法を使えるんだ。
ぼくは気がついたら圀宮籍にいたんだ。」
苗字を名乗らなかったのも、ようやく理解できた。
「でも、このことを言ったらるーさんは帰ってしまうと思ったんだ。
だから、魔王なんて嘘をついた。圀宮籍を、姉さんを守って欲しかったから。」
「ばか…言ってくれたら、あたし…」
「言ったら、帰ったでしょ?
そんなの無理、って。」
垢琉はあたしの性格をよく理解しているようだ。
「ねぇ、垢琉!じゃあ、部長は…。
お姉ちゃんは、どうなるの!?」
あたしは垢琉の肩を思いっきりゆすった。
垢琉ははっとした顔をして、緊迫した様子で告げてきた。
「まだ間に合う。るーさん…ううん、流伊覇姉さん。
特訓の成果、見せてくださいよ。」
「もちろんだよ。お姉ちゃんはあたしが救うからっ!!!」
2人で、部長…。雛深お姉ちゃんの病院へ、走り出した。