【短編】焼き芋と土曜日

「なぁ」

そんなわたしの背中に、彼が言った。

「これさぁ、冷凍するなりして、ちゃんと保存しといて。

なくなるまで責任持って食うの手伝うから」

「えっ?」

振り向いたわたしに、彼が食べかけの焼き芋を差し出した。

「だってさぁ。これ、こんなに美味いんだぜ。捨てるのもったいないだろ」

わたしは、釣られるように山吹色の焼き芋を一口かじった。

ほんのりと甘くて、いい香りが胸の中に吸い込まれていった。

「だろ?」

微笑む彼のことを見つめ、わたしはうん、と頷いた。

そして、心の中では、こう呟いた。

『うん。悪くない土曜日だ。

もしかしたら、人生で最高の土曜日かもしれない』と。