【短編】焼き芋と土曜日

「何? どした?」

彼が、不思議そうに聞いてくる。

「なんでもない」

誤魔化して、

「お腹空いてる? 焼き芋ならあるけど」

と言った。

彼は、テーブルの上に山積みになった焼き芋をじっと見つめ、

「そうだな、食わなきゃな」

と呟いた。

そしておもむろに一つ掴み、大きな口でほおばった。

購買で買ったカレーパンをかじっている昔の彼と重なって、思わず胸がときめいた。

やだな。

わたし、まだ好きなのかも。

再び薬缶に向き直り、にへへ、と小さく笑った。