【短編】焼き芋と土曜日

「これで足りる?」

「足りるけど……」

彼は、なんだか釈然としない様子だ。

だけど、わたしにはこの三万円の使い道がこれで正しいような気がしたんだ。

だから、少しも惜しくはない。

「はい。じゃ、お芋、全部下さい」

お使いに来た子供のようにわたしは言った。

彼も、やっと決心がついたようだ。

「はいはい。まいど」

疲れたような笑顔を浮かべ、

「家、どこ? 家まで運んでやるよ」

そう言って歩き出す。