「好きです」
そう告白されたのはつい1時間前のこと。
私、川崎 那来(かわさき なくる)は忙しさを理由に人生初の告白を無視してきた。
まず、告白について語る前に私のことを知ってもらうのが道理なので自己紹介をしてみようと思う。
7月10日生まれの蟹座。
高校生になって4ヶ月が経った。
好きな人、または付き合ってる人はいない。
趣味は読書。
性格は基本、地味だとよく言われる。
身長は平均より若干高いが体重は平均。
顔は平均だと願いたい。
勉強は努力してなかなかの成績をキープしてるが、運動は平均よりもできない。
友達はそこそこいる。
まあ、ここまで紹介をしとけば私が少なくても変な人間ではないことが伝わるだろう。
言えばそこらへんのどこにでもいる人間だ。
ずば抜けて何かができる訳じゃない。

さて、遡ること一時間前・・・
私の学校ではあと一週間で運動会らしき行事が行われる。
そこで運動が苦手というか嫌いな私は一つの競技にだけ参加すればいい雑用係になった。
応援道具を作った後に出てきたゴミを捨てに教室をでた私にある先輩が声をかけてきた。
藤永 悠(ふじなが はる)。
地味の分類に入る私でも分かる。
いや、たぶんこの学校で知らない人はいないかもしれない。
だってこの人、イケメンで優しくて運動も勉強もできる。
まるで二次元から飛び出てきました!みたいな感じだ。
だから大抵の女子はこの先輩に一回は好意を抱くという。
私だって一応、女なのでもちろん格好いいと思う。
で、なんで私に話をかけてきたのか不思議に思ってると
「そのゴミ袋持ってあげる」
とにっこり笑いながら言ってきた。
私じゃなくてゴミに用があったのかと勝手に納得してから私は
「別にいいですよ。重くないんで」
と丁重にお断りした。
「え、でも一応さ俺、男だし?」
「御厚意は嬉しいんですけど、ゴミを持つのに性別って関係あるんですか?」
と思ったまま言うと先輩は硬直してしまったので、私はゴミ置き場に急いだ。
ゴミを置いて帰ろうとした時にまたもや例の先輩が走ってきた。
「待ってー」
「なんですか?先輩」
「あ、あのさ。ごめん」
「何がですか?」
「さっきのこと・・・女子だからってバカにしたつもりないから!」
「バカにされたなんて思ってないですよ」
「良かった。嫌われたかと思った」
「私に嫌われようと好かれようと関係ないんじゃないですか?」
「俺、
 好きだから」
「俺、川崎のこと好きだから」
「はあ?」
「好きです」
こうして私は先輩に「好き」三段攻撃を思いっ切りくらった。