リムジンから降りて
マンションのエレベーターに乗り込む。
翔平さんはヨロヨロ歩く
私の腰を支えてくれる。

エレベーターの最上階のボタンを押して
ドアが閉まる。


私はふと、シマコに耳打ちされたことを
思い出した。

ー翔平って
呼び捨てにしてごらんなさいー

シラフだったら
そんな恥ずかしいことできない。


私は翔平さんを
呼び捨てになんてできない。



こんな素敵で
私には勿体無いくらいの旦那様を
呼び捨てにするなんて…



でも、今なら…


翔平さんのスーツをぎゅっと握った。
翔平さんがそれに気づいて
私を見下ろす。


私は翔平さんを見上げて
恥ずかしさを承知で

「翔平…」

そう呟いてみた。