「あら、やだ。ちょっとごめんね。」

いそいそと
レストランの外へ出て行く由香里さん。

由香里さんが席を外すと
隣に座る翔平さんが
私の頭に顔をつけてすっと息を吸った。



いきなりの出来事に
私はフォークを持ったまま固まる。

「しょ…翔平さん!ここレストラン!」

私は人目を気にして
小さな声で目一杯叫んだ。

すると翔平さんが口を耳元に近づけて

「だから?」

と囁いた。


翔平さんの低い声に背筋に電流が走る。

「シマのトリートメントの匂い
大好きだから。」

そう付け足して私の髪を
毛先までスーッと撫でる。

私は顔を真っ赤にして固まったまま…



「いつになったら俺に慣れるわけ?」

私のそんな反応を見てか
翔平さんがクスッと笑う。


「ま、慣れたらその反応
見られなくなるから構わないけど。」

翔平さんがそう言いながら
今度はその手を
私の太ももにすっと置く。


私はガチガチになって
さらに身動きが取れなくなっていた。


しかし、由香里さんが戻ってくるのを
確認した翔平さんは
すっとその手を離した。

その瞬間、少し淋しい気持ちになる。

翔平さんはいつだってそう。
私の気持ちをこうして掴んで離さない。




「なんか…陽ちゃんが来るって…」

由香里さんが席に着きながら言った。

「あぁ!?何でだよ!?」

あからさまに嫌がる翔平さんがいた。