私の一日は
寝息を立てる翔平さんを
起こさないようにベッドから抜け出し




…って翔平さんは朝に弱いから
全く起きないんだけど。



リビングにある
小さな仏壇の扉を開けて
高層マンションの最上階に
差し込む日差しを
浴びさせて
お線香をあげる所から始まる。



仏壇は私のお父さんと
お母さんのもの。
2人は私が高校に入学してすぐ
交通事故にあって死んじゃった。



私に身内と呼べるのは
お父さんの兄である
護(まもる)ちゃんという叔父だけ。



両親の死後
その叔父が古くからの知り合いである
翔平さんのお父さんに
私を預けたのが全ての始まり。



翔平さんのようなお金持ちの人と
知り合うことなんて
絶対ありえない庶民だった私。


しかも今では社長夫人だなんて
あの頃の
両親を亡くして絶望している私が
想像できるわけもない。