「お姉さん、風邪引くから、俺の傘入りなよ。家近い?送るよ」 手をとられ、立ち上がった。 掴まれたままの手を惹かれ、歩き出す。 ―――― あ 右足の軽さに驚いた。 もう私を縛るものがなくなっていた。 あんなにも簡単に、彼は ――――。 「変な人」 小さく呟いたつもりが、聞こえたらしい。 「お姉さんより、マシ」 花が咲くような、そんな笑顔で彼は言った。 冷えた頬が赤くなるのを感じた。