【苺ジャム】


最近、泣いていないなと思った。


悲しいとか、苦しいとか、心揺さぶられることとか

そんなものは、光の速さで過ぎ去った、もっと青々とした時間に置いてけぼりで


今はただ、同じ日常が過ぎていくだけだ。




クシャ、と音を立てて置かれた白い袋は、中身まで無機物みたいだ。

お気に入りのツナマヨおにぎり、僅かながらに残った健康への気遣いで買った野菜ジュース、食欲のない朝にぴったりの8枚切り食パン、ビールハイボールレモンチューハイ、貝ひも塩辛ジャーキーカルパス、の親父セット……


孤独な女が今日明日を生き延びるための餌のかたまり。


その中からビールだけ机に出し、残りの酒類と野菜ジュースを冷蔵庫に煩雑に収納した。


指をかければプシュッ、といい音を立てる。
この音を聞くためだけに生きているような節がある。



数年前までは一人でお酒を飲むことなんてほとんどなかった。
ましてやビールなど、外でもあまり飲まなかったものだ。

もっと甘ったるくて、フルーティーな、お酒というよりシロップの炭酸割りに近いものを好んで飲んでいた気がする。



その頃はそれで事足りていた、ということか……


今の私には、ビールの喉に刺さる炭酸が、ちょうどいい。