夏がよく似合う子だった。

向日葵がプリントされたTシャツで緑の中を元気に駆け回る姿が、慣れない仕事で疲れた心を癒してくれる。

悲しい思い出がある季節の中で、彼女はよく笑った。


「お兄ちゃん!」

木陰で休んでいる私に、そんなところにいないで早く出てこいと手招きする。

刺す様な陽射しは暑くないのだろうか。

額にしっとりと纏わりつく前髪を見て苦笑し、彼女が置いていった麦わら帽子を手に腰を上げた。


「君は昔からお兄ちゃんと呼ぶね」

なんで? と尋ねれば、きょとんとして首を傾げる。

少し考えてから、彼女は言った。

「パパにそう言われたのかも」

なるほど、僕が叔父と呼ばれるのを嫌がることを、兄は察していたのかも知れない。

納得しながら無理やり帽子を被せると、彼女はむずがりながらも嬉しそうに目を細めた。


彼らが逝ってしまったあの夏から、僕らはずっと身を寄せ合って生きてきた。

早くに両親を亡くす痛みを知っていたからこそ彼女の居場所でありたいと願ったけれど、いつの間にか、僕の方が彼女に居場所を求めていたような気がしなくもない。

12歳になった彼女は、もう人生の半分を僕と一緒に過ごしたことになる。

眩しい夏を裸足で駆ける彼女は、いつだって僕の一番近いところにいた。