LOVE or DIE *恋愛短編集*

「え、ちょっと……ここで?」

顔を近づけると、頬を染めて慌てる。
目を泳がせて困ったようなフリをして、でも逃げようとはしなかった。

「ちょっとだけ。……俺もう、充電切れなの」

突然の転勤で、遠距離恋愛が始まってたったの1ヶ月。
あとほんの数時間待てば部屋で2人きりになれるのに、久しぶりに嗅いだ彼女の香りがその数時間の我慢を拒否させた。

柔らかい唇、少しだけ感じた甘さは多分グロスで、邪魔だから全部舐めとってしまおうかとか思う。
俺と彼女の唇の間に、ほんのコンマ何ミリかの遮蔽物もあって欲しくないから。

緊張からか強張っていた彼女の身体の力がすっと抜けて、手が、俺の背中に回った。

俺の中の乾いてた部分が、少しずつ満たされていく。
潤っていく。
貪るように、もっと、と抱く腕にぐっと力を入れた、そのタイミングで――

不意に、遠くで犬っころが吠えた。
我に返ったようにトントンと俺の背中を叩く、ギブの合図。
無視、しようと思った。
どこの馬鹿犬だ、黙ってろ邪魔するな。

顎に親指をかけ、強引に口を開かせようとしたところでトントンがドンドンに変わった。