綺麗だったね、と、先ほどまで見て回ったバラ園の花々に想いを馳せてか、うっとりと目を細めた彼女が言った。

キャラにそぐわぬ趣味があったものだ。
長い付き合いだけど、コイツに花を愛でる心があるなんて初めて知った。

バラには興味も関心もない俺が、「O城跡公園の中のバラ園が見頃らしい」という彼女の誘いに乗ったのには理由がある。

ひとつ、彼女と一緒に過ごしたかった。
ひとつ、彼女の願いをかなえてやりたかった。
ひとつ、彼女といられるならどこでもよかった。

指折り数えてみても、全部が『彼女』に結び付くことに気付き思わず笑みが漏れる。
どれだけ欠乏してたんだ、たった1ヶ月で。

「ねえ、近場でいいからさ」と、彼女は言った。

「今まで行ったことがない場所で、今までやったことのないことをしようよ」

それを『俺と一緒に』と願う彼女が、愛おしくてしょうがなかった。