「ねぇパパ、今年の椅子はなにかなぁ」

「さあ、なんだろうね? サンタさんに聞いてごらん」


まだ幼い娘と、手を繋ぎながらイルミネーションに彩られた雑踏を歩いた。

抱っことせがまれることは減ってきた。
自分で歩くのが楽しいのかもしれない。

気を抜くとどこへ消えるか分からないから、ひとときも目を離せないのだけれど。

ゲームやおもちゃを欲しがる年頃のはずなのに、クリスマスのプレゼントは椅子だと思っているこの子の真っ直ぐさは彼女によく似ている。





『陽ちゃん、メリークリスマス』





「パパ? どうかしたの?」

「ん? なんでもないよ。さ、じいじとばあばが待ってる。早く帰ろう」






*fin*

(執筆2014/6/16)