「玲奈玲奈。前話してたドーナツ屋さん、今日オープンだって!」
「え、本当? 行っちゃう?」
「行きたーいっ!」
放課後だった。
教室はもうガラガラだったけど、みのりはやっぱり入って来ない。
工事中から気になって話してたお店のオープンを、同じクラスの友達から聞いて慌てて飛んできてくれたようだった。
クラスにも友達がいるのに、私を選んで声をかけてくれるのが嬉しかった。
私もみのりも少しはしゃいでて、声は少し大きかったと思う。
教室の反対側で、ガタンと机か椅子の鳴る音がした。
彼だ。
この時間に教室に残ってるのは珍しい。
――あ。
また、こっち見てる。
大きな声で喋ったから聞こえちゃったかな、と、少し恥ずかしかった。
……それとも。
『廣岡くんも一緒に行く?』
なんて。
言えるわけもなく。
彼はこっちを見てた。
恥ずかしくなって、急いでみのりの方へ視線を戻した。
『行こっか』と声をかけようとして、止まった。
彼女も、彼を見ていた。
いつも直線上に並んでいた意味を、私はその時知った。



