「彩萌ちゃん!よく来てくれたね!」

と、彼女は喜んで彩萌を迎え入れる。

「あいつ、うじうじと部屋に閉じこもっちまって。親の言うことなんか聞きやしない。なんとかしておくれよ」

そう言いながら、すぐに悠太の部屋へ通そうとはせずに、まずはリビングで椅子を勧めるとコーヒーを入れた。

「ゆっくりしていきな」

自分も愛用のマグカップにもコーヒーを満たして腰を下ろした。

「バスケの大会で負けて、先輩が引退したって聞きました」

湯気を立てるコーヒーを一口すすった後、彩萌がおずおずと口を開く。

「そのせいなんですか?」

彼女は大きく息を吐き出した。

「実はその前からなんか変だったんだよねぇ。もっと早くに声をかけてればよかったのかもしれないけど」

自分を責めるような言い方をすると、彩萌が慌てて「そんなことは」と否定してくれる。

優しくてしっかりした子だ。
こういう時いつも、この子が嫁に来てくれたら良いのにと思ってしまう。
だが、当人同士には全くそういう気がないらしいから残念だ。