LOVE or DIE *恋愛短編集*



「佳織」

珍しく兄に呼び止められて、佳織は立ち上がりかけていた腰を再びソファに落ち着かせた。

「何?お兄ちゃん」

「コンビニのバイト、少し減らしてもいいぞ」

それは意外な言葉だった。
意味を推し量りかねて、佳織は首を傾げる。

「一人暮らしの費用なら、もうそこそこ貯まっただろ。足りなけりゃ、俺も少しは出してやる」


―――【一人暮らし】

その単語に、佳織は表情を曇らせる。
最近では、あまり考えないようにしていたのに。

「大丈夫だよ。そんなに無理してないよ私」

と、兄の申し出を断った。
実際、コンビニの仕事は楽しんでやっている。
本音を言えば、その楽しみを取り上げて欲しくない。

「そうじゃなくて」

兄は引き下がらなかった。

「そろそろ、地元を離れる心構えを始めたほうがいいだろう」

「―――・・・まだ、早いよ」

顔を伏せたまま、佳織は立ち上がってリビングを離れた。