「悠太、運べ!!」

純也が大声を上げる。

監督からの指示ではない。
ともすれば3年生の引退試合。
この場面で、3年のポイントガードの仕事を奪えと。

ベンチにいる他の3年生はその声に反応してチラリと視線を送る。

だが、誰も非難の声をあげない。


エンドラインからのスローインは、ポイントガードではなく悠太に渡った。

これまで得点を重ねてきた悠太には、守りの堅い選手がマークについてる。
そう簡単には運ばせまいと、即座に対応。

だが―――

悠太はマークが寄った瞬間に、素早くポイントガードにパスを回す。
マークマンの視線が一瞬ボールにそれた隙に、悠太は彼を振り切った。

ボールを受けたポイントガードも、もう簡単にはドリブルで相手を切り崩せない。

ノーマークとなった悠太が手を挙げる。

パスが渡る。

そのまま素早いドリブルでゴールへ突き進む。


「行けっ!!」

雅樹の声が響く。


点取屋の特攻に、相手チームのディフェンスが集中する。


その瞬間、悠太は笑った。