「でもこれで」

してやったり、とでも言いたげなドヤ顔で、純也が指をさしてくる。

「悠太は柏木以外の誰かに恋をしていることが判明した!!」

純也の言葉に、周囲は「おおっ!」と沸き立つ。
誰だ誰だ、と騒ぎだす友人たちに、悠太は頭を抱える。

めんどくさくなって視線を逸らすと、騒がしい男子グループの会話が気になったのか、こっちを見ている女子と目が合った。

日野 紗耶香―――悠太と同じバスケ部の女子。
目が合った途端に、彼女はバッと顔を背けた。

―――うわ、そんなに激しく避けなくても。

紗耶香の態度に若干傷ついた悠太は、小さくため息を漏らす。

いやいや、別に避けられたわけじゃない。
盗み聞きみたいな形になっちまったから、気まずかっただけだろ。
と、自分に言い聞かせてなんとか気を取り直した。


担任が入ってきて朝のHRが始まるまで、悠太は周囲の追究を無視し続けたのだった。



佐野 悠太、中2。

これは、彼の初恋の物語。