―――めんどくせぇ!

悠太は雅樹を一瞥すると、そのまま無言で教室に足を進める。

「おお、お、おいっ」

肩に腕をまわしたままの雅樹を引きずるようにして、そのまま教室に雪崩込んだ。
周りにいた他の友人たちも、その様子にゲラゲラ笑いながらついてくる。
悠太が自分の席に落ち着くと、友人たちは囲むように周りの席に陣取った。

「マッキ、柏木じゃねえよ、悠太の思い人は」

別の友人、白石 純也の言葉に、悠太はギョッとして顔を上げる。

「悠太が好きなのは~・・・」

「ジュン!!」

慌ててその先を遮ろうとするが、周りも先に続く言葉を期待して、悠太の妨害を阻止しようと羽交い絞めにした。

「アホかお前ら!!放せっ」

「ジュン、今だ、早く!」

必死に暴れていた悠太は、だが、ハッと気付いて純也の方へ視線を向ける。

「つーか、俺、お前に好きなヤツの話とかしたことねぇし」

悠太のその言葉に、周りは「なんだよ!」などと騒ぎながら悠太を解放した。

―――ってか、良く考えたら誰にも言ってねぇし。

悠太は、下唇に手を当てながら宙を見つめた。