ずっと好きだから。





教室に入ると、祐奈が心配そうに顔を覗き込んで来た。

『目、腫れてるけど大丈夫?何かあった?』

私は心配させたくなくて笑って首を振った。

『そっか、何かあったら言ってね?私達に隠し事は厳禁だよ!』

『分かってる、ありがとう。』

『いーの、いーの。』

祐奈はニコッと笑った。

私は少し後ろめたく思った。

なんで私は祐奈みたいに素直になれないんだろ…。

だから、私は可愛くないって言われるんだ。

ダメだなぁ…、私。

何故か恋をしてから周りの目がすごく気になり始めた。

私は授業に集中しようと前を向いた時にフッと思った。

付きまとうなって言うことは遊んじゃいけないのかな?

私はどうしようと考えて居たけど、やっぱり断ろうと決め、放課後に言うことにした。

私は放課後、1組へと足を運んだ。

『ごめんね!北川くん。8月4日はあそべなくなったんだ。』

『えっ?何で?』

『ちょっと、旅行に。』

『旅行?』

『うん。』

『そっか、分かった。』

『じゃあね!』



ーー断ってしまった…。

私は何故か泣き出しそうなほど悲しい感情に囚われ、作法室へと足を運んだ。

そして、作法室に着いた瞬間に涙が一筋頬を通り、床にポトリと落ちた。

その一筋がきっかけで涙がポロポロと溢れ出した。

そして私はその場にしゃがみこんだ。

そしてしばらくすると、誰かに背中をさすられていることに気づいた。

『日和、何があったの?』

それは…、祐奈だった。

それだけではない。

顔を上げると、佳奈と新しく出来たもう1人の茶華道部の伊藤 佐奈(いとう さな)がしゃがみこんで私の頭を撫でていた。

『……これ。』

私は今朝もらった手紙を手渡した。

『ねえ、これ何なわけ?』

『こんなの、気にしなくていいよ。』

『そのっ…ねっ!付き合ってるっていうっ…のはねっ…嘘なんだけどねっ…柊南っ天さん…は、北川くんのことっ、好きなんっ…だって。』

嗚咽で、何度も途切れた言葉を必死に伝えた。

『日和…。』

『私ね…、北川くんの誘い断っちゃった。』

最低だよね…、嫌いになるよね。

もう、素直になりたい。

『ねぇ、今からでも遅くないんじゃない?』

『えっ?』

『訳を話して、もう一回遊んでくれないか頼んでみようよ。』

『でもっ…。』

『日和は…、好きなんでしょ?北川くんのこと。』

『何でっ!』

『分かるよ、日和見てたら。最近ますます可愛くなって来てるもん。』

『可愛くなんて…。』

『日和は可愛いんだって!自覚しなよ。』

『でも…。』

『あっ、ほら一緒に行ってあげるから言いなさい!』

私は3人に引っ張られて連れて来られた。

『『『きったがわくぅん!』』』

3人は息ぴったりに北川くんを呼んだ。

北川くんは驚いた顔をしながらこちらにやってきた。

『どうしたの?』

『日和から話があるんだって!』

『そうなの?』

北川くんは私に目線を合わせるように中腰になった。

きっと今、私の顔を真っ赤だろう。

『えっと…、迷惑かもしれませんがもう一回遊ぶのに入れてくれませんか!?』

私は緊張し過ぎて声が裏返った。

そして祐奈がさっきの手紙を北川くんに差し出した。

『あっ、それはっ!』

私が伸ばした手は手紙を掴むことなく空を切った。

そして、しばらく無言で呼んでいた北川くんが手紙から目線をあげると私を見てニコッと笑った。

『あのさ、噂嘘だから、気にしなくてもいいよ?それに迷惑とかじゃ全然ないし、俺が誘ったんだし別に気にしなくてもいいよ?』

そういうと、北川くんは私の頭をポンポンと撫でた。

私はしばらく固まっていたが事態を呑み込むとボンッて音がつきそうなほど顔が赤くなった気がした。

そして、さっきから肩を震わせている北川くんの方を見ると北川くんは顔を真っ赤にしながら笑っていた。

『神田さん、面白い!』

『笑わないでよぉっ!』

そんな感じで無事におわった。

そしてとうとう遊ぶ日は明日に迫っていた。