眼鏡男子の脳内デフラグ


どれほど、そうしていたのか


彼女が一番最初に発した言葉は

「チョコ、食べる?」だった



余りに普通なものだったので
「あはは」と笑ってしまった


まったく


「…別に、聞いていいですよ?」

「…え、と、じゃあ」


「し、死んじゃうの?」

「死にません」



「治るの?」

「治りません」


「……だから、走らなかったの?」

「はい」


「だから、謝るの?」

「…まあ、はい」




彼女は僕の手元の眼鏡をとって

僕にかけると


「…もう、謝っちゃダメ」



彼女の顔が見えた



「…泣いてると思ってました」

「泣かないよ?」


ああ

あなたは



「大抵は、この話で泣かれますから」

「あたしは、泣かない」


いつだって



「あたしが泣くのは、本当に痛みが分かった時だけ」


簡単に




「今はまだ、秋山くんの痛みが分からないから」



僕のかけたフィルターを



「だから、泣かない」


破りますね






手放したくなくなるじゃ、ないですか