「……………」
「………ズッ…」
「……ズズッ…」
「あ、秋山くん…」
「……はい?」
「ティッシュ…ある…?」
はー、もう
「どうぞ」と箱ごと渡した
「何をしてるんです?」
騒いだり、走ったりしたと思ったら
今度は泣いてるし
「だって…か、かわいそう、で」
「…………」
チラッと彼女の読んでいた本を見て納得
「松井さんは、泣いたり笑ったりといそがしい人ですね」
「すみません…」
「ま、あなたらしいのではないですか?」
「え?」
「付き合う方は疲れますが」
「…すみません」
フッと苦笑いした
「それだけ泣いてくれれば、作者も喜ぶでしょうね」
「そ、そうかな」
「そうですよ。
一人の人間の感情を揺さぶったのですから」
「あ、じゃあファンレターでも書こうかな」
…………
「フランス語が出来るんですか?」
「え?日本語じゃダメ?」
ダメでしょ。相手はフランス人です
その本は訳されてるだけです
それに
「その作者は他界してます」
「ええ?!」
まったく…

