2月27日
 
 
 今日は最悪の日だ。

 
 外は寒いし、客は銃の事も知らない癖に無駄な知識だけを喋る阿呆ばかりだった。


 どうせそいつらの言った通りに改造した所で、

 ろくに使いもせず、効果も無いに決まっている。


 せめてもの救いは下手くそのお陰で、

 わしが無意味な殺人に加担しないで済むという事だ。


 どうせ当たらんだろうしな。



 だが一人もっと阿呆な客が来た。


 抜くのに速く、

 射撃は正確で、

 タフな銃が2つ欲しいと言って来た。



 注文の仕方を何も知らん奴だ。


 すると男は砂金の入った袋と壊れた銃を袋でくるみ、わしに寄越した。


 仕方ない、何も言うまい、久しぶりの上客だ。





 2月28日


 驚いた。


 あの男の銃は壊れていた。


 整備不良ではなく、しっかり掃除もされていた。


 単純な使い過ぎによる部品の磨耗、銃口の亀裂。




 どれ程撃ったのだろう。


 黒いその銃は硝煙が染み込んでいるようだった。


 怪我はしているがこれは美しく、強く、何より深みがあった。


 擦り傷、切り傷、火傷が混ざった銃身は一冊の歴史書よりも面白い。


 それを使う人間はそれ以上の物を背負っているであろうからだ。



 あいつは注文の仕方を知らないんじゃない。



 俺を試してやがる。