柏木
名前は知らない。
一度聞いたことはあったが
「そんなことはどうでもいーでしょー。」
と言われ、それっきりだ。
……別に興味もないし。
いつも同じ笑顔を顔に張り付けていて、
感情的になることもない。
…少なくとも私が共に過ごした5年間での話だが。
私には5年前より以前の記憶というものがない。
この男…柏木は多分、なにかを知っている。
昔はそれを聞き出そうともしたが、
口を滑らす気配も
話す気も見受けられないためあきらめた。
彼はいつも真っ白いスーツに手袋
それと真っ白な革靴を履いている。
ちなみに私は真っ黒いコートとスカート
手袋に低いヒールの靴という組み合わせだ。
「なにか用か。」
「冷たいなぁ、せっかく仕事持ってきたのにー。」
よく見ると脇に封筒を挟んでいた。
こいつはたまに私に仕事を持ってくる。
「そうか。」
それだけ言って封筒を受けとる。
……殺人鬼Hikariへの依頼だった。


