キノがぎこちなく机を全て後ろに移動した教室で七瀬さんの手をとってステップを踏んでいる。



気にしない

気にしない


あ、キノそこ足を踏み出さなきゃ

てかさすがに近すぎじゃない



「高橋さん!!」


「は、はい」


「は、はいじゃなくてね、さっきから呼んでるのよ

ほら、キノくんが気になるのは分かるけれど集中してね」


「気になってなんかいませんよーはは」



駄目だーー
同じ教室にいたらキノが気になって集中できない…

どうしよ

場所変えようかしら

いや、色んなクラスが使ってるから空いてる教室なんてないか。



「はいはい、5ページ目のセリフもう一回言ってみよ」


「はい、えーと、シンデレラっ、あなたはおうちにお留守番よー
せいぜいお屋敷をピカピカにしておくことね。

わーはっは。」


「う……うーん、まあまあまあ、シンデレラって噛まないように言えるようになったね」


「どうも」


「なんていうかね、棒読みなのよね。
劇なんだからもう少し大袈裟に抑揚つけていいのよ」

「つけてみたつもりなんですけどね…」



やっぱりうまくいかない。

キノはあんなにうまい感じにこなしてるのに

私才能ないんだな。


仕方ない

才能ないぶん努力でなんとか人並みまでたどり着いて迷惑はかけないようにしないと。



「あ、キノくーん、体の寸法取らせてくれるー?」



衣装班の女の子たちがキノを取り囲んだ。


私はまた台本から目をそらしてしまった。