ダメでしょって可愛く言われても
もうとにかく早く行かなきゃ行けないのに
どうしてそんなこと言うの?
エリちゃんの本気の眼差しに弱い私は言い返せない。
「七瀬さーん!早くしてー!」
吉田さんが焦ったように舞台袖からこちらに手を振った。
もう時間がない。
「エリちゃん、はやく」
「いったーーいっっ!!」
エリちゃんが
急にガクン、としゃがみこんだ。
私は何が起こったのかわからず固まる。
当たり前だ。
何も起こってないし。
エリちゃんが急に声をあげただけなんだから。
「七瀬さん?!」
「ごめん、足捻挫して、もう立てない、歩けない、やばい、死ぬ」
「え、え、エリちゃん!?」
「フーちゃんが、代わりに出てくれます」
びしっと指指された私は口を開いたままエリちゃんを呆然と見据えた。
痛そうな顔をして細い足首を撫でるエリちゃんは
まさしく足を痛めているようだった。
吉田さんも深刻な表情でエリちゃんを見たあと
ぱっと私を見た。

