うすうす気づいていたことはいくつもある。

その一つは
キノにはお父さんもお母さんもいないということ。

詳しい話は聞いたことはないが

そういうことだろうと思っていた。



「まあ、母親は健在だし、父親の方もまあたぶん生きてはいるんだろうけどね」

「…それは、」


「あー、ごめん、これたぶんあんま話さない方いい気がするから

隆也に聞いて隆也に

あいつの承諾もなしに話せることじゃなかった」


「そうですか」


「うん、あ、送ってく?危ないしね」


「いえ、近いんで」


「そっか、じゃあ、

これからも隆也をよろしくね」


「はい」


もう一度頭を下げて私は病院を出た。

あれからまだ

三時間くらいしかたってないのか。


夏休みは明後日には終わり

またいつもの生活が戻ってくる。

私はどうするべきだろう。
私はこれまで通りに過ごしてもいいのだろうか。


キノと
いつも通りの会話をしてもいいのだろうか。


濃い夏休みだった。


たくさんのわからないことに出会って

私はそれを知って

これからどうすればいいんだ。



私は



キノの側にいよう。


前のように、そう、いつものように

キノの隣に居てあげよう。


キノの好きなことをさせてあげよう

私は、そうだな

カエル触れるようになれたらいいな。

これはきついか



…とにかく


しばらくはしつこく詮索するのはやめておこう


また、こんなことになるのは絶対に嫌だ。


キノがおかしくなるスイッチはわからないんだ。


だから、今は


キノが望む通りに
側にいるから。





大好きなキノが


側に居てくれたら




それでいいから。