赤い橋の手すりの上に

キノはフラフラと立っていたのだ。


私は声を出したかったのだけど

声にならなかった。

涙と喉の奥から嗚咽が吐き出される。


なにしてんのよそんなところで


言わなきゃ

キノに、ちゃんと


伝えないと




「タカ、聞いて」


「わた、しの、話っっ」


「俺ね」



話聞けよっっ

なんなのよ、


やめてよ悪い冗談は


ふざけないで

そんないつもの顔色で


そんな不安定なところに立たないで。


いつもみたいに笑ってよ

抱き締めてよ


不安にさせないで。


キノの行動はいつも

予測不可能だ



もう

わけわかんない




「キノっ、私はっ」









「タカが大好き


タカを世界で一番愛してる


タカが俺から離れていくなら





俺はいらないよね」




「ちがっ、あ、」








ねえ

キノ




星が綺麗だね




ほら水面にたくさん映って

ここから一緒に見ようよ




どうして

星に向かっていくの。




ドボンッと

水しぶきがあがるのを土手から見た。


ここの川は深い上に流れも早い





キノ





キノはいったい



なにを考えていたの?





そのとき私は


キノのこと、なにも知らないことを



改めて自覚した。







「キノっっ!!!!!!!!」






私はまだ




本当のキノを知らない。