「わかってる

どんなにあの人がやったことと同じことやってやろうって思ったって


気持ちは晴れない

よけい、辛くなるって

わかってる

だけど」



マヒロくんの声が

少し

震えていた。



そうか


マヒロくんは

ただ
それだけだったんだ。





「本当に

好きだったんだ。


一生大事にしたいって思えた初めての人だった」


「うん」


「もう、そんな気持ちもなくなってしまって


きっともう、持つこともないだろうって思っていたんだけど」



今までで一番

長い沈黙を挟んだあと


マヒロくんは、ふっと笑って
私から腕を離して体をあげた。



「高橋さんは、

本当に

優しい人だね」


「…?私?」


「ただの友達が、ここまでしないから。

あとさ、あんま男の家なんて軽々しくあがんなよ

マジで襲われるよ」


「あがんないよ

マヒロくんは、友達だから」


「友達、ね、」



私も体をあげてにこっと笑った。
マヒロくんは呆れたような乾いた笑いをして


ふうっと
息をはいた。




「高橋さんだったらよかったのに」


「はい?」


「いーや、ありがとね

心配してくれて
七瀬とは、ちゃんと話すよ

それはそうと、キノはまだカエル探してんのかな」


「あり得るね」


「高橋さんってさ、なんでキノのこと好きなわけ」


「え?あ、うーん」



なんでだ?


あんな彼女よりカエル選ぶような

自由奔放なバカを


私はなんで好き?



うーん


まあ、そりゃあ




「私のキノ、かわいいやつだから」


「高橋さんって変わりもんだよねぇ」


「うん、自覚してる」


「そうだ、いいこと考えた
高橋さん、もう一回寝転がってよ」


「な、なぜ!?」


「キノに、痛い目見せてやんの」


「どういうこと?」


ふふん、と含み笑いをするマヒロくんは携帯を片手に私の肩を押した。


四回目だよっ


少しは運動しよう…

これ殺人犯相手だったらあっさり殺されてるぞ



「ドッキリ、しかけよーぜ」



「……え?」



マヒロくんが
ニヤリと意地悪そうに口角をあげた。