「別に邪魔するつもりはなかったの」


この人は,あの日見た


龍二の婚約者だ……


「龍二さんが全然私に見向きもしなかったから,そんなに落としたのはどんな人かなって,後つけてきただけだから」



「……わりぃけど」



「わかってるよ。約束は約束だもん。


婚約は破棄ね。お父様にそう言っておく」



「……あぁ」



でもそんなことしたら



「もともと婚約なんて意味がなかったの」



「え?」



涙をふきながら問うと



「私の片思いだったから」



「……真田」



「アハハ,もう名前も呼んでくれないんだ」



「俺には花奈がいればいい」



「……そっか……花奈ちゃんてゆーんだ」



「花奈にてぇ出すなよ」



「出さないよ。そこまで悪じゃない」




いいの?婚約破棄なんてしていいの?




「私は理沙ってゆーの。よろしくね?」




「あ,はいっ」



目の前に出された手を握る




「それにしても,お似合いだねぇ」



「え?そんなことはないです」



不釣り合いだから



今まで努力してきた



少しでも可愛くなろうと





「鈍感なんだっ」




「へ?」




「アハハ,うぅん。気にしないで」





そーゆわれても





「後それから,私達結婚してないからさ



ただの同棲ってかたちだけだから」




「そうなの?」




「あぁ」