.+゚麗子side゚+.
私の耳元の、彼の甘い囁きが身体中を震わせる感覚。
落ち着いてもないし震えてもいない、その堂々とした声だけが聞こえる。
あと聞こえるのは、私の心臓の音。
こんなに近くて、黒谷くんは大丈夫なの……?
私はもう限界に達しそう………。
私は、どうやら駄目らしい。
同じ人に何度も何度も謝られると、気分が悪くなってくる。
さらに、私にまで罪悪感が芽生えてしまう。
だから、黒谷くんに私を見てほしかった。
私を見るためには、下げている頭を上げなくてはならないでしょう?
それを言った瞬間、何か悲しくなって泣いてしまった。
────何で、何も悪くない人が謝ってくるんだろう。
私、何か謝られるようなことした?
貴方は何も悪くない。だからお願い。
私のために顔を上げて?
そう伝えたかったんだけど、
泣いてしまったから自分が何を言ってるのか分からなかった。
心配になったから、涙が出てきたのかしら。
そう気づいたときにはもう私は彼の腕の中。
がっちり抱き締められていて逃げられそうにない。
………けど、逃げようなんて思わない。
思えないのは、何故?