「そうか……ごめん。俺にとっての常識をぶつけるなんて、失礼だよな……」
俺はまっすぐな室田麗子の目から視線をそらしてまた謝る。
「……あーもう!!じゃあ貴方は一体何をしたらその無駄な罪悪感が消えるわけ!?もういいって言ってるでしょう!?私の目をちゃんと見てよ……」
呆れさせてしまったと思った。
だけど、彼女の顔を見たら悲しそうな顔をしてて。
大きくて潤んだ瞳からは大粒の涙が今にも降ってきそうで。
「私をちゃんと見て………」
その言葉が聞こえた瞬間、俺は室田麗子が泣くところを初めて見る。
そして、気づいたら抱き締めてた。
「あぁ………ちゃんとお前のこと見てるよ。最近、お前しか見えなくて困るほど」
「それは………いけないわね……っ」
「じゃあ他の奴しか見えなくなるようにした方がいい?」
「馬鹿ねっ……その特定の人が……っ、問題じゃなくて、周りが見えてない……ってことが問題なのよ……………っ」
彼女は泣きながらでも俺に笑顔を見せてくれた。
あぁ──────────…………愛しい。
