しかも、主人公だからか台詞が結構多い。
この量を2ヶ月で覚えるのはちょっと難しいかもな……。
どーりで秀才の室田麗子がこうやって放課後に一生懸命覚えているわけだ。
俺にも時間はない。そう思うと暗記の作業に取りかかった。
そして、大分覚えてきたとき、室田と二人で読み合わせ練習もした。
1日でこんなに暗記できる俺って、まじ天才。
「『あら、なぜ私がここにいるって分かったのです?』」
「『薔薇の芳しい香りと共に、貴女の美しい鳥のさえずりのような歌声が聞こえてきたのだ』」
「『まぁ!でもどうしましょう』」
「『どうした?』」
「『私はすぐにでもこの場所を離れて貴方とあの町へ帰りたいのですが』」
「『帰らないのか?』」
「『……いえ、帰れないのです』」
「『なぜだ!?』」
「『私にも分からないのです。あ、そうだわ!この本になら何か書いてあるかもしれません!』」
「………で、ここで本を二人で読む………」
丁度良いところに台本があったので、台本を二人で顔を寄せて読む演技。
「『あぁ、ありましたわ!えー……魔法使いの刻印により、移動範囲が限られてしまった場合、その土地の権利者との愛のこもったキスで呪縛から解放されるだろう……ですって』」
「『その土地の権利者って………この薔薇の城は我のものでは……』」
「『こ、これは私が勝手にこの土地に建てたのです』」
「『じゃあ、土地の主は……』」
「『王、貴方でございます』」
その台詞を言うとき、室田麗子は俺の方をキリッっと見つめてきた。
その真剣な眼差しに、吸い込まれていきそうで。
「………ちょっと?黒谷くん!?次の台詞は!?」
「……………え」
「え、じゃないわよ!せっかく練習していたのに!」
「あ、ご、ごめん……」
