「ちょっと、何がおかしいのよ!」



しばらく笑っている俺を見て、室田麗子は少し怒り気味で話しかけてくる。



「お前、間接キスって分かる?大丈夫?」


「うっさいわね、分かるわよそんなことくらい!」



威張りながら彼女は一番上に乗っかっているレモン味以外の、


真ん中のチョコレート味に顔を接近させて。


俺は笑うのをやめて、また驚いた顔してる。



は?だからこいつは何やってんだよ!


今言ったばっかりだろうが!これは間接キスだって!


心ん中では思っても、驚きすぎて声がでない。



「ちょっ………お前っ…………」


「間接キスしたくて食べているんじゃないわよ!私が欲しいフレーバー持ってる黒谷くんが悪いのよ!?嫌なら全部私に寄越しなさい!」


「はぁ!?誰が室田なんかに渡すかよ!だいたいこれは俺の金で買った!お前が持ってんのも俺の金で買った!おごってもらってる奴がずいぶん偉そうだな!?」


なんとか声はでたものの、金銭関係の喧嘩って面倒なんだよな。


自分から言っといてあれなんだけれども。



「とりあえず、今回はおごってやる。感謝しろ」


「………………あ、」


「ん?」


「あ、………ありがとう」



!?


あーあ、見ちゃったよ。赤面してお礼言うツンデレ。


本当にいるんだな、現実に。こういう奴。


俺はただただつられて赤面するしかなかった。