やがて、その『誰か』は俺の頭を撫でるように、手を髪の上で滑らせた。


そんなことされたら、誰だか気になってくるじゃんかよ。


先程までどうでもよかったのに、と思いながら俺はまぶたを開く。



ゆっくりと開けたのにも関わらず、やはり夕陽は眩しい。


光に慣れ、だんだんと相手の姿が見えてくる。


スカートってことは女子だ。


髪は長めだ。


眼鏡はかけていない。


顔は………笑ってない。真顔だ。



………………真顔?



そういえば俺のクラスに、


いつも真顔と言うことで浮いている女子がいたな。


髪は長めだったはず。その子は席が後ろの方で、


俺は前から二番目だから、あまり記憶に残っていないが。



名前は何だったかな。真顔の女子だろ?


えーと………あ、そうそう、室田麗子だ。



見た目は可愛いと言うより綺麗系だ。


だが、笑わないので愛想がなく、声を聞くことなんて授業中くらいだ。


ようするに『ぼっち』ってやつさ。



俺の髪を何度も撫でる室田麗子。



「ふふっ」



自分の耳をつい疑ってしまった。


俺は先程までかすかにしか開けていない瞳を見開いた。



口角が、あがってる……………



口元に俺の頭にある方とは違う左手を添えて。


大きな丸い目を細くして。


優しい顔をして、笑っている。