室田麗子は俺の脅された反応が面白いのだろう。


「ふふっ。冗談よ、送ってくれれば秘密にしておいてあげるから」


「はぁー、しょうがねぇー」



俺は室田麗子と口をきいたこと、これまでにあったのかな。


多分、今日が初めてなんだろうな。


でもな、何でだろう?


最初は存在さえ曖昧に記憶していた奴の笑顔が



……………頭から離れないなんて。





俺は室田麗子の後ろを追うように歩く。


だが、次第に隣に並んで歩いた。


そして、手を繋ぎたい、なんて思ったのはほんの一瞬だけだろう。


俺はそんなに『彼女』っていう特別な人が欲しかったのだろうか。