「空野君!夢野君!」

放課後になり、僕と夢野が2人で帰っていると後ろから秋山が声をかけてきた。

「一緒に・・・帰っても良い?」

秋山は笑顔で僕にそう言うと、一瞬だけ夢野を見た。

「あ・・・!」

僕は秋山の顔を見ると、すぐにあのノートのことを思い出した。
鞄の中にはまだ僕が拾った秋山の恋ノートが入っている。
それを思い出した僕はいつ秋山にこのノートを返そうか悩んだ。
今返してしまったら、このノートの持ち主は秋山だということが夢野に分かってしまう。
夢野には、1度だけこのノートを見せてしまっているし、内容も話してしまった。
しかし、だからと言って秋山の好きな人が夢野だとバレてしまうことはないかもしれない。
その時、夢野が足を止めた。

「秋山を見て思い出した・・・」

夢野はそう言うと僕を見た。

「空野が伊達に刺されて、意識がなくなる前に
俺に何か言ってたよな?秋山が何とかって言ってたような気がするんだけど。
あれは何だったんだ?よく聞こえなかったんだ。
俺はもうお前が倒れててそれどころじゃなかったし。
秋山って名前を言ってたのは覚えてるんだけどな」

僕は一瞬何のことかと思った。倒れる前に自分がどんな言葉を口にしたかは
ほとんど覚えていなかった。
しかし、僕が秋山という名前を口にしたのなら、
自分があの時夢野に何を言ったのか大体予想できた。
僕はきっと、本当に死んでしまった時のことを考えて、
最後にどうしても伝えなければならないと思ったことを夢野に伝えたのだろう。

「ああ、多分それは・・・秋山が夢野のことを好・・・」

「空野君!!!!!」

僕は突然秋山が大きな声を出したので驚いた。

秋山は顔を真っ赤にして僕を見ていた。

「あ、いやっ、やっぱり違うかも」

僕が笑って誤魔化すと夢野は不思議そうに僕を見ていた。

「ね・ねぇ!これから3人で遊ぼうよ!ねっ?」

秋山が話題を変えようと必死になる。

秋山はいつか、夢野に自分の気持ちを伝えるつもりなのだろうか?
今まで彼女が悩んできたことを僕は知っている。
触れたくても触れられない夢野を、彼女は誰よりも見てきた。
好きな人を恐れてしまう、もう1人の自分と戦っていた。
秋山は僕に、恋ノートには頼らず好きな人には告白するなどと嘘を付いたが、
秋山はきっとそうなりたいと願っている


僕は秋山の気持ちがいつか夢野に伝わる日がくるようにと願った。

それを伝えるのは、僕ではないのだ。