「お前のその考えは、きっと当たってるんだ」

夢野はそう呟いた。

「俺が眼帯を外してお前を見たとき、
凄く・・・嬉しかったんだ。
あんな気持ちは初めてだった。
目を開けても、あの時の痛みはなくて、
辛い過去を思い出すこともなかった。
ただ、お前が目の前にいることが嬉しかった。
気付いたら、涙が止まらなかった。
この右目は、お前を見ることを望んでた」

その時だった。

後ろから、誰かがこっちに向かって走ってくる音がした。

僕は振り向こうとしたが、気が付いたら地面に倒れていた。

突然のことで、今の状況をすぐに理解することができなかった。

なぜかお腹のあたりが激しく痛んでいた。

嫌な痛みだった。

僕はその痛みに触れた。

視線をゆっくりと移すと、僕の手が真っ赤に染まっているのが見えた。

僕の前に立っていた人物が息を荒げながら怒鳴った。

「残念だったな!
結局、お前は死ぬんだよ!空野翼!
馬鹿にしやがって・・・。
転校してきたことを後悔するんだな」

その声は、間違いなく伊達友希だった。

伊達の手には血で染まったナイフが握られていて、かすかに震えていた。

自分の血が流れていくのを感じる。

夢野の声がした。しかし、よく聞き取れない。

あまりの痛みに、何も考えられなかった。

一瞬、このまま死んでしまうのではないかという考えが頭を過った。

僕はここで死ぬわけにはいかないのに。

これでは、たとえ伊達が僕を刺したとしても、

それは夢野の右目を見たからだという結論に繋がってしまうかもしれない。

僕は伊達がそこまでしてくるとは思っていなかった。

まさか僕を刺したあとで夢野も刺すつもりだろうか?

僕は、手を伸ばした。

誰かが僕の手を握った。夢野だ。

「ゆ・夢野・・・、秋山が・・・」

僕は気付いたら秋山の名前を口にしていた。

「秋山は、ずっと夢野のことが・・・好きだった・・・。
・・・だから・・・秋山・・・・・・」

僕はそこまで言うと、目の前が真っ暗になった。