全校集会で体育館に全員が集まり始めていた。

僕が夢野の右目を見るところを、みんなに見てもらわなければ意味がない。

右目を見ても死にはしないという事実を知ってもらうためには、もうそれしかないと思った。

というより、今の僕にはそれしか思い付かない。

僕はゆっくりと、その時がくるのを待った。

全員が集まると、先生の長い話が始まった。

事故で亡くなった谷川の話が出てくると、体育館がしんと静まり返った。

谷川も、もしかすると青木と同じように自殺だったのかもしれない。

3年のあいつらにイジメを受けていたんだ。

あいつらは谷川に夢野の右目を見せようとしたのだからそれ以外考えられない。

本当に、どこへ行ってもイジメが存在している。

きっと僕がこの先どこへ行こうと、それが消えることはないのだ。

しかし僕はきっとこれからも人をイジメることはないだろう。

イジメられる人の気持ちを僕は知っているし、

なにより、父に教えられた言葉を僕は絶対に忘れないからだ。

集会は終わりを迎え、みんなが立ち上がり教室へと戻ろうとした時、
僕は前に出ていった。

「ちょっと待ってください!」

僕の声は体育館に響いた。

「話があります。僕は2年E組の空野翼です!」

みんなが僕を見ている。

「皆さん、少し下がってください」

僕はそう言いながらステージの上に上がった。
僕は先生が先程使っていたマイクを使った。

「僕と同じクラスの夢野類君について話をさせてもらいます。
この学校中で流れている彼についての噂ですが、
「夢野に触れたら」もしくは「夢野の右目を見たら」死ぬと言った
話は、真実ではありません。僕のクラスにいた青木君の死も
3年生の谷川さんの死も、夢野君には関係ありません」

僕がそこまで言うと、あの3年の斎藤達が前に出てきた。

「何言ってんだ!谷川はそいつの右目を見たんだよ!
だから死んだんだよ!そいつの目は本物だ!
人を殺せる目なんだよ!」

僕はステージの上から3年生を見下ろした。

「それは嘘です。夢野は眼帯を外していないと言いました」

僕がそう言うと、夢野を呼び出した男子が笑い出す。

「夢野が嘘を付いてるんだよ!ばーか!」

すると夢野がステージの上にあがってきた。

「夢野の右目を見るのは、この僕です」

僕がそう言った瞬間、斎藤達の顔色が変わった。

「僕は今からここで夢野の右目を見たいと思います。
皆さんは怖いでしょうから、もう少し下がって僕達を見ていてください。
夢野は僕しか見ないので、皆さんと目が合うことはありません」


僕の隣に立つ夢野は心配そうに僕を見ていた。