チャイムの音が鳴ると夢野がすぐに僕の腕を掴んだ。

「ちょっと来い」

と、夢野はそのまま僕を人のいない所に連れだした。

「空野。教えてほしいことがあるんだ」

「な・何?」

「お前にはもう俺の過去を話した。
俺はこの眼帯を人前で外すつもりはない!
同じことは繰り返したくないって言ったよな?
お前がこの右目を見ても死なないっていう
その自信はどこからくるんだ?
どうしてそう思った?」

夢野の右目が痛み出した原因は、
夢野の父親が母親を殺してしまったことだ。
その光景を見てしまった右目は今でも父親のことを怨み続けている。

「勘だよ。僕の勘だ。
夢野はその右目を開けると痛むと言った。
そして、目を閉じると痛みがなくなる・・・。
本当にそれだけなのか?
ただ痛むだけなのか?
僕の考えが正しければ・・、
痛みと共に、あの光景が浮かび上がってきたはずだ。
父親が母親を殺してしまったあの場面だよ」

僕も夢で見ている。
少年だった夢野が父親に向かって叫んでいた。

「その右目には、あの時の光景が焼き付いていて、
消えることがないんだ。だから閉ざすしかない。」

目を閉じれば何も見えない。もう何も見たくないのだ。

「僕は・・・ずっとこのままではいられない。
このままじゃ、僕が辛いんだ!
僕が夢野の右目を見て、死なないことが分かったら
その眼帯はもうしないって約束してくれるか?
僕も約束する。絶対に、いなくなったりしないから」

僕の言葉を黙って聞いている夢野の瞳に、僕が映っている。

「僕は、真実を知りたいんだよ。
お願いだ。夢野。僕にその目を見せてくれ」